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愛知の胆管がん労災認定記者会見を行いました(2013年10月)
2024.04.24|相談事例
大阪の校正印刷会社、SANYO-CYPで印刷機のブランケットローラーの洗浄剤に含まれていた有機溶剤にばく露した労働者17名が胆管がんを集団発症した事件発覚後に、全国で行われた胆管がん発症に係る労災請求のうち2013年10月1日までに24件が労災認定されていました。この問題では、SANYO-CYPが同年9月26日に大阪労働局に会社と社長が労働安全衛生法違反で書類送検され、SANYO-CYP胆管がん被害者の会が「社長のしたことは殺人に等しく、労働安全衛生法でなく過失致死傷や殺人の重罪が適用されるべき」とのコメントを発表するなど、動向に注目しなければならない状況が続いていました。当時、産業医科大学教授だった熊谷信二氏は、印刷機のブランケットローラーの洗浄剤に含まれていたジクロロメタン、1,2ジクロロプロパンが胆管がんを発症させる原因物質であることを突き止めました。
名古屋西労働基準監督署は2013年6月24日付で、名古屋市内の印刷会社で1995年まで10年間働き、発がん性のあるジクロロメタンが含まれた洗浄剤を印刷機ローラー清掃などに使用し、6年程前に胆管がんを発症した40代の男性の労災を認定しました。被災者男性のHさんによると、印刷会社の窓を閉め切った環境の中で印刷機のブランケットローラーを洗浄する作業に従事していましたが、洗浄剤はとてもきつい臭いがして、臭いに慣れない人はすぐ退職していったということでした。また、出入りの材料屋さんから、「よくこんな悪い環境で仕事をしていますね」と言われたこともあったということでした。
ジクロロメタン単独ばく露による労災認定はこの男性が初めてで、前年より弊センターと関西労働者安全センターが支援してきました。この認定を受けて7月26日(金)の午後3時より、事例の重大性を鑑みセンター事務所で記者会見を行いテレビ、新聞等に会見の様子が報道されました。会見では、胆管がんで労災認定された男性の心境書が他の資料とともに記者に配られました。心境書は下記の通りです。なお、心境書中の高度先進医療とは粒子線治療のことで放射線治療より副作用を軽減でき、治療効果も高い治療法ですが、当時は健康保険の適用がされていませんでした。男性は、粒子線治療を受けるため290万円近い治療費を自費で払わなければなりませんでした。
今回の胆管がんの労災認定に対して
今回労災認定していただき医療費の自己負担分に対する経済的負担と不安を払拭できたことを安堵しています。また労災適用に常に付随する時効設定を適用除外としていただいた事については嬉しく思います。しかし他の職業病についても時効の適用は止めていただき、それを一般化するのがあるべき姿であると感じています。病気の潜伏期間・情報把握の有無などの影響で疾病の要因が職務であるとの認識のないまま長期間放置された状況で時効の適用という対応はあまりにも理不尽だと思います。
高度先進医療については原則、労災適用外との判断には違和感があります。保険医療でない問題は別として、職業病に国が正式に認めた治療方法、且つ公的資金で運用されている治療を行った場合にもかかわらず労災が適用されないということは納得できません。
私の勤めていた印刷会社はすでに廃業していることと退職して相応の年数が過ぎたことにより元上司・同僚の方々と連絡がとれず状況が分かりません。印刷業務で使用した化学物質が原因で胆管がんを発症し、業務と病気との因果関係が解らず、労災保険請求もできず、胆管がんで苦しんでいる方々が他に大勢いらっしゃるのではないかと心配です。厚生労働省はもちろんですが、報道機関の方々にも、職業性胆管がんの問題がもっと広く社会に認識が広がるようお願いします。
国には有害物質に対する精度ある分析と規制強化を厚生労働省に強く進めていただきたいです。
(被災者H)