Activites / 活動のご案内

参加型職場環境改善トレーニング

トレーニング概要

名古屋労災職業病センターは、現場の労働者が中心となり、すぐの改善を目標にシンプルな手段で改善を実行していく「労働者参加型職場環境改善トレーニング」を日本人、外国人労働者が働く介護事業所や縫製工場等で実施してきました。このトレーニングにより、介護事業所では職員と利用者の安全のための改善が同時に実行され、労働者の職場環境改善活動により利用者の安全や健康もさらに守られる職場作りができたり、日本人、外国人を問わず、労働者自身で改善を実行することにより職員のモチベーションが向上したり、グループ討論により職員間コミュニケーションの改善に役立つことが分かりました。

「労働者参加型職場環境改善トレーニング」を職場で行ってみたいと思う労働者、事業主の皆さんがいらっしゃいましたら、名古屋労災職業病センターがお手伝いしますのでご連絡ください。

事例

特別養護老人ホームでの参加型安全衛生活動の実施(2012年11月30日)

11月13日に愛知県内の特別養護老人ホームで参加型安全衛生トレーニングを実施しました。
この日はデイサービスと老人ホームで働く日本人12人、韓国人4人、フィリピン人1人の職員22人が参加型安全衛生トレーニングに参加しました。このトレーニングの為、医師で研究者の毛利一平さん、東京労動安全衛生センターの仲尾豊樹さんが参加して下さり、弊センターからは成田が参加しました。今回のトレーニングには、韓国語の通訳者とタガログ語の通訳者にも同席していただきました。
今回の参加型トレーニングは、日勤を終えた職員の方々が定期的に勉強会を行っている終業後の時間を使って行いました。施設内のデイサービスの大きな部屋でセッションを行いましたが仕事を終えた職員の方々が入室してくるたびにくじを引いていただき、紙の色によってグループ分けを行い、デイサービスの職員の方々で作ったチーム以外、老人ホームの職員にはそれぞれ3つのチームに分かれていただきました。

トレーニングの最初に参加者全員で円陣を組んでもらい、恒例の生たまごを参加者全員でパスするゲームを行いました。このゲームは職場の安全衛生対策を参加者自身に考えてもらうきっかけにしてもらうために行うゲームで、一回目は容器に積み上げた生卵を全員でパスし時間を測り、もっと早く、安全にたまごを運ぶ方法を全員で考えてもらったあとにスーパーでたまごを販売する時に使用しているパックにたまごを入れて再びバスをしてもらい、運搬が安全になったことと、時間短縮になることを実感もらいます。たまごを入れるパックを使用することは参加者には2回目のパスまで秘密にしてありますので、サランラップで容器とたまごを固定するなどのいろいろな意見が今回も出ました。

たまごゲームのあとは、参加型安全衛生活動の目的、現場の労働者自身が職場や作業の安全性、快適さを評価し実行することを目指すことと、この活動の大切な4つの特徴、
①すぐにできる改善を考えること
②自分の経験とみんなの経験から考えること
③お金をかけないで出来ることから考えること
④みんなで一緒に考えること
を簡単に説明したあとに、全員で介護事業所での多くの改善提案を載せた「利用者さんと介助さんのための安全衛生ヒント集の32の項目を全員で読み合わせを行いました。このヒント集は今回、韓国語とタガログ語にも翻訳し配布しました。

読み合わせの後に実際に職場巡視を全員で行っていただき職場の良い点3つ、改善提案3つを考えてもらいました。時間に制限がありほとんどのチームがデイサービスコーナーのある3Fのみを職場巡視しましたが、一つのチームは老人ホームの入居者の部屋のある4Fを巡視しました。職場巡視にあたって改善が必要なところを指摘するのでなく、どういうことを行なったらもっと良くなるか具体的な提案をすることを強調して参加者に伝えました。

にぎやかに全員で職場巡視をしたのち4つのグループにそれぞれ職場の良い点3つ、改善提案3つを模造紙に書いてもらいホワイトボードに張り出して発表してもらいました。各チームの討論の結果は下記の表の通りでした。イエローチームはデイサービスの職員のチームで、グリーンチームは4階を職場巡視しました。

イエローチーム

良い点改善提案
デイサービスの日当たり、風通しが良い 障がい者トイレの段差
隣の幼稚園の園児の声が聞こえる 収納棚の整理(トイレ 汚物処理室)
多目的かつ開放的なスペース トイレの矢印が見にくいので位置を変える
  相談室がない

ピンクチーム

良い点改善提案
障がい者トイレが広い(清潔、鏡に工夫がある) トイレを自動点灯にしたい
トイレ、ふろ場の掃除ができていて、ニオイがない。職員は常に工夫して使っている。 トイレの段差をなくす工夫。トイレ内風呂場の手すりの改善。
絵画、掲示物で雰囲気作りがされている。 浴室トイレの備品置き場の工夫。男子トイレの中にスペアーのペーパー置き場を作る。

グリーンチーム

良い点改善提案
休憩場所に畳がある 利用者のトイレの表示を見やすくする
4階と5階のローテーションに差がない 消火器の表示を分かりやすくする
利用者の部屋に目印をつけてある ドアの鍵をボタン式にする

ブルーチーム

良い点改善提案
掲示板に写真が貼ってあり良い トイレの段差をなくす
感染対策がしっかりできている 風呂場の整理整頓
洗面所の薬品等が見えない様にしてある 地震対策でテレビ等が動かないようにする

当初、1時間を予定していた今回のトレーニングでしたが、参加者が熱心に取り組んでくれたため、30分ほど時間延長になりました。
トレーニングから数日後、職員自身によりトイレの入り口の段差が低コストで解消され、外部からの来所者にもトイレの位置が分かりやすいよう、今までなかったトイレサイン(トイレ表示の案内板)の取り付けが行われました。

  • 介護職場 トイレの段差解消
    2,000円程の経費で行いました
  • 介護職場 利用者にわかりやすい
    トイレサインの取り付け

事例

縫製工場における中国人からの技能実習生を対象とした参加型職場環境改善トレーニング(2014年9月9日)

一宮市にある縫製工場でミシンを使った仕事をしている中国人技能実習生を中心とする参加型職場環境改善トレーニングを5月22日の夕方に行いました。参加した女性は中国人技能実習生12人、日本人職員1名、日本人の社長と中国人のご婦人、社長のご両親でした。この日は一列になり容器に盛ったたまごを落下させて割らないよう注意深くパスすることにより、安全な物の運搬を考えるたまご運びゲーム、職場巡視、グループ討論、発表を行いました。アクションチェックリストは中国語版を用意しました。

技能実習生も日本人もトレーニングが始まる直前までミシンを操作し忙しくしているので、最初にたまご運びゲームを行い意識を切り替えていただいた後、中国語、日本語のアクションチェックリストを用いた職場巡視を2グループに分かれて行っていただきました。そして、職場巡視をもとにした職場の良好点3つ、改善提案3つを挙げるグループ討論を行ってもらい、最後に模造紙にカラーペンで書いてもらい全体発表をしてもらいました。発表は中国語で行われましたが、今回弊センターに同行してくれた中国出身の女性が通訳してくれました。発表は明るい雰囲気で進みトレーニングは終了しました。発表の内容は下記の表1の通りです。

表1)5月22日の参加型職場環境改善活動でのグループ討論結果
<グループ1>
◆良好点
①みんな仲が良い。
②椅子が大きくて座り心地が良い。
③設備がそろい、工具も種類が多いのでとても使いやすい。
④住居と勤務先が近くて便利。
◆改善提案
①トイレのごみ箱が小さい。そして「トイレ使用中」が分かるよう表示すべきだ。
②アイロン台近くの壁にも時計が欲しい。
③台所にある絨毯が古く、新しい物に変えてほしい。
<グループ2>
◆良好点
①職場は広くて明るい。
②社長は機械の修理が出来るため、お金をかけずに済む。
③社長家族はみんな親切だ。
④同僚同士の間では仲が良い。
◆改善提案
①トイレは男女別に分けて欲しい。トイレ使用中かどうか表示が不鮮明の為待ってしまい、待ち時間がもったいない。
②不要なもの(機械)をきれいに片づけて欲しい。

トレーニング後の7月8日、縫製工場を訪ねました。アイロン台の上の壁に今までなかった時計がついていました。これは、日本人職員の女性が家で使っていない時計を持ってきて取り付けてくれました。この日は社長のお父上が職場環境改善トレーニングを行った工場以外の作業場や寮を案内してくださったのですが、ペットボトルを切って作った壁に掛けておくタイプのペン立てや野菜の栽培など技能実習生達の工夫を色々と見せていただくことが出来ました。

  • 縫製工場 アイロン台の上に
    新しく取り付けた時計