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石綿肺がんで労災認定(2021年4月)

2024.05.20相談事例

長年建設業で働いていた68歳のFさんが、ご自身の石綿肺がんの相談の為、センターを訪れたのは昨年の10月でした。2011年11月に肺がんが見つかり、2012年1月と2月に左肺の手術をされたとのことで、大急ぎでFさんと筆者で刈谷労働基準監督署に行き、労災保険の休業補償給付の請求をして、進んでいた時効(休業補償給付の請求期限は発症日から2年)を止めにいきました。

杉浦医院の森先生や産業医の久永先生に手術前のFさんの胸部画像を見ていただいた結果、労災認定基準を満たすプラーク(石綿吸引によって壁側胸膜にできる限局的な線維性の肥厚)が肺にあることが分かりましたが、問題は石綿にばく露した職歴の証明が出来ないことでした。Fさんは高校卒業後、縫製工場や運送会社、フライス旋盤加工など石綿とは関係ない仕事に従事した後、24歳で建設業界に転職し、住宅、ビルなどの水道工事を行う会社2社を経験した後、安城市にあったM建設に入社し鉄筋建物の建設や解体工事に従事しました。水道工事2社は関西の会社でしたが、すでに閉鎖されたうえ法務局にも会社の登記が残っておらず、最終石綿ばく露職場で約18年務めたM建設では社会保険に加入させてもらえなかったので厚生年金加入記録が残っていないうえ、当時の社長は亡くなり、同僚も所在不明でした。さらに、現在のM建設の経営者が石綿ばく露作業はなかったと労基署に証言していました。Fさんはあきらめず、M建設が入っていた建物の大家さんと、M建設に務めていた時に工具等をしょっちゅう買いに行っていた金物屋さんの店主からM建設でFさんが仕事をしていたという証明をしてもらい、さらに、M建設時代に取った型枠支保工の組立て等作業主任者の技能講習修了証明書にM建設の住所が記載されていたので、それも労基署に提出しました。

今年3月、刈谷労働基準監督署はFさんの肺がんを業務上と認定しました。Fさんがあきらめず、ご自身の職歴を証明するため努力したのが良かったのだと思いました。

(2014年4月執筆)